厳美渓と明治の文豪幸田露伴の紀行文(その1)

枕頭山水(ちんとうさんすい)    (五)Page  1/5

厳美渓

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      易心後語えきしんごご 其の四
仙臺(せんだい)以北へ進むにつれて見えつ隠れつ我に伴う山あり、山姿奇峭(さんしきしょう)という にはあらねど高く群山(むらやま)(ぬき)んでて気象自ずから雄なるありさま(この)も しく、一ノ関にて汽車を飛び下り朝餉(あさげ)したたむるもそこそこ、(かの)雪のあ る大きな山はと指さし問えば栗駒山と申しまするとの答へに、さては 耳にだけならば馴染(なじみ)の無きにもあらず、様子のよりては上がりてみむと、 道の順など尋ねるに、つまりは此の磐井の河上にして行程(およ)そ十何里、た だし人力車は三里ぐらい限り役立たず馬にも中途で御別れなさらね ばならぬと覚しめせ、御病気ありて須川への御入湯ならば兎も角も、御 遊覧あそばさむなんとの儀ならば御不所存千萬(ごふしょぞんせんばん)に存じまするが御止め 申すではござりませぬ、何はあれ此所(ここ)より二里半ほど彼所への道を 辿(たど)りてまいられば厳美と申す地のござりまするが、其所(そこ)へは態々(わざわざ)
※御不所存千萬・・・不心得者 ※山姿奇峭・・・山は険しくそびえ立っている 
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